どんなに良い三味線でもツボ(勘所)が減っていると、そこを押さえたときの音色は割れてしまって酷いものになります。またどんなに良い皮がしっかり張ってあっても端が狂っていると、特に端が高くなってしまっていると弾きにくく、ぼやけた音色になってしまい調整が必要な状態です。
この調整は大変緻密な作業となります。見た目にはあまり変化がないように感じられることもあるでしょうが音色においては非常に改善がみられます。特に狂いの激しかった三味線にこのような修理を施せば新品当時の音色が戻ってくる可能性があります。
お店にお持ちいただければ大まかにですが三味線の状態をその場で診断いたします。診断は無料ですが、事前のご連絡をお願いいたします。遠方の場合は一度ご連絡をいただいた上、お送りください。
診断の後、当店で修理する場合は概算見積もりをお出しします。作業途中に不具合が見つかることも多々あるため、正式な金額は作業途中もしくは完了間近にご提示しております。この点は予めご了承くださいませ。
お手持ちの三味線の鳴りが気になっているという方はお気軽にお問合せください。
「勘減りしている」とは三味線を何度も弾いているうちに棹面のツボ(勘所)が減ってきて(削れて深く掘れてきてしまって)いる状態のことをいいます。
面ツラが掘れてそれだけを綺麗に修理も可能(安価)ですが、端も直さなくてはいけない事もありますがお客様次第(応相談)にて。
特に重要なのは棹面全体を緻密に「整える」ことです。
そして4とか6のあたりだけが勘減りしていたのかその部分だけタメが深くなっている案件も見かけます。このような勘減り修理を施してしまっている三味線をご新規のお客様で良く見かけるわけですが、この状態から本来の状態へと戻すのは今まで以上に非常に手間がかかってしまいます、、勘減り修理というのは綺麗に削るというよりは棹面を整える精密作業ですので一度へんな手を入れてしまうと復旧が非常に大変なものとなってしまいます。
あともうひとつ、勘減り修理と併せてやる端調整という修理がございます。
どの程度で修理すればよいか見てみないとわかりませんが、当店では勘減り修理2〜3回のうちに1回やっておけば良いと思います。
※当店では使っている駒の高さ、三味線のジャンルで端の高さを分けています。
余談ですが、表面の張り替えがある場合は胴面を削って端調整をする、という荒業をSNSで見ましたがこれはいつか胴の厚み(重ね)がなくなってきた時バランスが悪くなりいずれ胴を交換という落とし穴が待ち受けています。
特に2と3の糸において4とか6とか9あたりのツボ(勘所)は頻繁に使われる勘所のためその個所の棹面の減りが早く削れて深く掘れてきてきます。
そうなると特に下のほうのツボ、下のツボへ行くほど隣のツボとの距離は近くなっていくわけですが、例えば9あたりのツボが深く掘れていたりするとそこのツボを押さえた時、絃を弾いた時に振動した絃が隣の10のツボに当たる事もあります。
そうすると割れたようななんとも不快な音色が出てしまい、これが勘減りした際に修理をしなければならない理由であり、勘べりの際の不快な音色の仕組みであります。
この状態をしばらく放置し、さらに勘減りが深く掘れてしまってから修理に出された場合は、その深い箇所だけをアロンアルファなどのエポキシ樹脂接着剤で埋めて棹面を整えるといった修理内容になることもあります。そうした場合はそこの部分だけ接着剤を使用し箇所だけ光ってしまいますのでご容赦ください。
ちなみに棹の材質によってはそこの箇所だけ非常の減りがはやかったりするものもございます。
そうした場合も上記のように接着剤を使用して埋めたりの修理対応となります。
もしくはその掘れている箇所だけ同様の別材で埋めて整える修理もございます(その修理が上手な職人がいます※2021年4月現在)。
糸をつけてしまえば一見わかりにくいですが、裸状態にすると四角い木目の違う材が見えるので不人気ですが長い目で見てかなりお勧めの修理です。
この案件からはこちらからご指摘しないとなかなか気づいていただけないレベルになります。
すべてのツボ(勘所)が鳴る三味線はまず基本的にありえないのですが、特に多用されるツボ、例えば3、4、6、9、10などにおいて鳴らない(音色に伸びがなく詰まってしまう)といった場合は弾いていて非常に気になってしまいます。
これは勘減りしているわけではないのだけれど、経年変化などで棹面がデコボコしてしまったことによって起こる現象です。パッと見てでは全然分からなくて細かく見ていくとようやく分かるレベルです(音色では分かります)。
勘減り修理とは減った箇所だけを削ればいいものではなくて、棹面全体を整える必要があります。
こういった場合でも勘減り修理が必要となってきます。棹面を「削る」というか「整える」という非常に繊細さが必要な修理となります。
これは特に津軽三味線においてなのですがどうしても下ツボは音の伸びがあまりよろしくなくて詰まりがちだと思います。
職人さんによっては下ツボの音色の伸びを期待するのは諦めて上の方のツボ(3・4・6・9・10)の音色の伸びだけを考えて「棹面の整え方+端調整」をする方もいます。
下ツボの音の伸びをだすことができる「棹面の整え方(かんべり修理)+端調整」ってのがあります。以前は当店で製作した津軽三味線のみ、このような細工(特殊な棹面の造り)をしておりましたが、今ではご希望の方にはやらせていただいております。
かんべり修理をすると下記にも記載してますが、端調整が必要になったりすることも多くなります。合わせて皮張り(表面)をお勧めする場合もございます。
そして勘減り修理を何度もしていくと棹の厚み(重ね)が徐々に減っていくわけですが、そうなってきた場合の弊害として「ホゾが緩くなりやすい」というのがあります。。
良い皮を強く張ったとしても端(は)が狂ってしては全く意味がないものとなってしまうほど三味線における端は重要です。
端のことも分からず、状態の悪いまま弾いてる方も多数いらっしゃいます。端調整したほうが良い時もいくつかの案件がありますのでご紹介します。
あれだけ強く絃で引っ張られているのですから経年変化も含めどうしても胴が棹に対して持ち上がってきてしまいます。そのような状態を「端が高い」」と言ったりします。
こうなってしまうと非常にぼやけた音色となってしまい、皮にも寄りますが聞いていて気持ちの良いものではなくなってしまいます。
経年変化というか、その木の性質とかもあるのですが、棹が捻じれてきたりする場合があります。
捻じれると1の糸側と3の糸側の端高さが変わってしまい、そうすると例えば1の糸側の音色に比較して3の糸側の音色は音が小さくなったりと鳴らないような感じに陥ります。
勘減り修理した際は棹面の高さが変わってしまうので端調整が必要になることも多くあります。
糸(絃)が高く(棹の面から離れてる)弾きづらいという場合も実はこのようになってる可能性があります。
ここは端調整するために外れる構造になっているのですが、外れるにはいくつかの原因が考えられます。
三味線は体積の割には非常に重い楽器ですので、落としたりした際の衝撃はとても大きくなります。そうした際に棹のホゾに衝撃が流れないよう(もし流れたらヒビや割れ、折れというもっと悲惨な状況になります)「中子(中木)」が外れて(もしくは天神が外れて)衝撃を逃がしてくれています。
そしてまた新たな可能性として経験上、棹の中〜下ホゾにヒビが入る案件も。。
純粋に衝撃だけで外れることもあるのですが「衝撃+仕込み口のガタ」が原因の場合もあります。
仕込み口が緩いと、わずかな衝撃でも中子が外れます。この場合は中子取付+端調整に加えて仕込み口のガタ(緩み)直しという修理が加わってきます。
端調整は本来「中子(もしくは中木)」と呼ばれる箇所をいじってやるものなのですが、非常に精緻な技術と手間を要求される修理なのでかなり大変だったりします。
そんな感じなのであるところは胴面を削ったりとか端(は)が狂わないように棹面を偏って削ったり(かんべり修理)、津軽三味線の場合ですとりんどう金具で調整とうまく手抜きしたり、、
その辺については安心してぜひ当店を利用していただければと思います。
最初に書きましたが、三味線は面ツラと端で決まります。